読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

小児科 酒井英知

■はじめに
1992年にアメリカ小児科学会が乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防策として乳児の仰向け寝を推奨した結果、SIDSの死亡率は大幅に減少しました。しかしその一方で、長時間の仰向け姿勢が一般化したことで、乳児の頭のゆがみ、いわゆる変形性頭蓋が増加し、現在では18~40%の乳児に頭の形の変形がみられると報告されています。日本でも従来から仰向けで寝かせる習慣があるため、同じような問題が広く認められています。

■赤ちゃんの頭のゆがみはどうして起こるの?
乳児の頭蓋骨は脳の著しい成長を妨げないよう非常に柔らかい構造をしており、複数の骨が縫合部でつながっています。この柔軟性は胎内での圧迫や出生時の産道通過による変形を吸収する役割を果たしますが、同時に外からの力によって容易に形が変わってしまうという特徴もあります。胎内での姿勢による圧迫、出生時の頭への負担、出生後に同じ方向ばかりを向く癖、長時間仰向けで過ごす生活習慣などが重なることで、頭の一部に偏った圧力がかかり、結果として頭蓋骨が徐々にゆがんでいきます。病的な原因による変形(頭蓋縫合早期癒合症)が否定された場合には、まず生活の中で姿勢や向き癖を整えることが重要となります。

■頭のゆがみが残った場合の影響はあるの?
乳児期にみられる頭のゆがみは、生命に関わるものではありません。しかし成長していく中で整容的な問題となり得ます。例えば、顔の左右差が目立つ、帽子が脱げやすい、ヘッドフォンがずれやすい、似合う髪型が限られる、眼鏡が傾きやすくなるといった悩みが生じることがあります。

■頭のゆがみへの対応はどうすればいいの?
体位変換・タミータイム(うつぶせ遊び)・科学的根拠が十分ではありませんがドーナツ枕やベビー枕の使用などが対応として挙げられます。これらを行っても十分な改善が得られない場合や、ゆがみが高度な場合には、ヘルメットによる治療が選択肢となります。
ヘルメット治療は、赤ちゃん自身の頭蓋の成長力を利用して形を整える仕組みで、扁平な部分には空間を作って成長を促し、突出している部分はヘルメットが軽く接触することで成長を抑制し、全体の形を整えていくというものです。外から無理に圧力をかけるわけではないため痛みを伴う治療ではありません。治療を最も効果的に行える時期は生後3~6か月とされており、6か月を過ぎると頭蓋の成長速度が落ち始めるため矯正効果が緩やかになります。また、より高度な頭の変形のほうが効果を得られやすいことも過去の報告でわかっております。

■最後に
頭のゆがみは発生頻度が高く、多くの親御さんが直面する問題です。早期であればあるほど対応しやすいため、頭の形に気になる点があれば早めに医療機関に相談することをおすすめします。