読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

検査技術科 科長 望月久仁子

【自己血輸血とは?】
自分自身の血液を採取・貯血し、輸血に用いる方法です。
自己血輸血の種類には、貯血式自己血輸血、希釈式自己血輸血、回収式自己血輸血の3つがあり、どの種類を用いるかは症例により決まります。
3つの中でも最も多くおこなわれている方法が貯血式自己血輸血です。

【貯血式自己血輸血の対象症例は?】
人工関節置換術や脊椎手術などの整形外科手術、帝王切開などの産婦人科手術、大腸切除や肝臓切除などの外科手術、そのほか脳外科手術、泌尿器科手術、口腔外科手術など輸血を必要とする予定手術全般が対象となります(当院ではこれらをすべて対象としているわけではありません)。また、まれな血液型の方や不規則抗体を持つ方など適合する血液の準備が難しい方も対象です。

 

【貯血式自己血輸血のスケジュール】
ある程度の出血が予想される手術や出産に備えて、あらかじめ自分自身の血液を貯めておく必要があるため予定日の数週間前からスケジュールに従い採血(貯血)を行います。
● 測される出血量に合わせて貯血量、採血回数を決定します。
● 年齢・体重の制限は原則ありませんが、採血量は1回上限400mlとされ、体重50㎏以下の方は400ml×体重/50㎏を参考にします。
● 採血(貯血)当日には事前に血液検査をおこない予定通り採血可能かどうか確認します。

 

【貯血式自己血輸血は誰でもできるの?】
貯血式自己血輸血の採血(貯血)では全身状態が良好で、必要量の血液を貯血できるだけの日数が必要になります。したがって以下に当てはまる方は貯血式自己血の対象となりません。

● 貯血式自己血採血ができない例
▷ 緊急手術が必要な方
▷ 貧血の方(原則Hb11.0g/dl以上を適応とする)
▷ 37.5度以上発熱している方
▷ 治療が必要な皮膚疾患・感染創・熱傷のある方
▷ 抜歯後3日以内の方
▷1カ月以内の発熱を伴う重症の下痢発症者
▷ 重度の心疾患を有している方

【貯血式自己血のメリット
 献血で作られた血液(同種血)を輸血する場合に起こり得る問題を回避できます。
● 献血による輸血でおこるおそれのある問題
▷ 絶反応…発熱・じんましんなど
▷ 感染症…肝炎・エイズなど
▷ 移植片対宿主病(GVHD)…輸血した血液が患者さんの体の組織を攻撃する疾患

【自己血採血の際の注意事項】
採血や手術に向けて体調を整えるため、次のことに注意しましょう 
● 採血前日~当日
▷ 十分な睡眠をとりましょう
▷ 激しい運動、労働は避けましょう
▷ アルコールの摂取は控えましょう
▷ バランスのとれた食事をとりましょう

● 採血時
▷ 所要時間は採血後の輸液(点滴)も含めて約1時間です。
▷ 採血中に気分が悪くなる、吐き気がする、などの症状が出たときは医師や看護師に知らせてください。

● 採血後
▷ 帰宅途中で気分が悪くなる場合もあるので車の運転は避けましょう
▷ 激しい運動、労働は控えましょう
▷ 飲酒は控えて食事や水分を十分にとりましょう

【さいごに】

 手術や出産時に備えて貯血式自己血をご希望される方は主治医までお問い合わせください。