読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2025.07.01

泌尿器科 大野晟南

【尿路感染症とは】
尿を生成する腎臓から尿を溜める膀胱、尿道と尿の通り道を総称して尿路といい、この尿路に起きた細菌感染を尿路感染症といいます。頻尿や排尿時痛、発熱などの症状があるものから、尿検査で細菌陽性が出るが症状がないもの(無症候性)まであります。
今回は代表的な疾患を解説します。

【代表的な疾患】
●腎盂腎炎
発熱を伴う尿路感染症です。基礎的疾患を持っていない人に起こる単純性腎盂腎炎と、前立腺疾患や神経因性膀胱、糖尿病、ステロイド内服など感染を起こしやすい病気を基礎とする複雑性腎盂腎炎があります。単純性腎盂腎炎は思春期から閉経期の女性に起こりやすいとされています。

・原因
細菌が尿道から膀胱、膀胱から腎盂へと逆流することで腎臓全体に炎症を起こすことで発熱します。原因となる菌は大腸菌が多いとされています。

・症状
発熱、寒気、体のだるさ、背中の痛み、頻尿など。排尿時痛や頻尿、残尿感といった膀胱炎症状が先に出ることもありますが、ないこともあります。

・検査
尿検査、採血検査が必要です。尿の中に細菌がいないか確認します。尿から細菌が検出された場合はどういった菌が原因になっているか、またどんな抗菌薬が効くのか調べるために尿培養検査を一緒に行います。状態に応じて超音波検査、レントゲン、CT検査を行います。

・治療
全身状態が良好(活気があり、食事や飲水ができている)な場合は外来にて抗生剤内服薬を処方して治療をします。
採血で感染症の数値が異常高値であったり、全身状態が不良な場合は入院にて点滴での治療が必要なことがあります。

●膀胱炎
尿を溜める膀胱に炎症が起きる病気です。体の構造上、女性のほうが尿道の長さが短いため男性と比べると膀胱炎になりやすいです。

・原因
尿道から細菌が膀胱に逆流し、膀胱内で細菌が増殖することが原因です。長時間排尿をしていなかったり、残尿が多かったりすると排尿に伴う排菌がうまくいかず膀胱炎になります。

・症状
排尿の時に違和感や痛みがある(排尿時痛)、トイレに行く回数が増える(頻尿)、尿に血液が混じる(血尿)といった症状があります。すべての症状がそろっている方もいれば、この中のいくつか当てはまる人もいます。発熱はありません。

・検査
尿検査、採血検査が必要です。尿の中に細菌がいないか確認します。尿から細菌が検出された場合はどういった菌が原因になっているか、またどんな抗菌薬が効くのか調べるために尿培養検査を一緒に行います。

・治療
抗菌薬の内服を行います。内服することですぐに症状は改善します。症状が改善しない場合は抗菌薬を別の種類に変えてさらに5~7日間内服を続けます。

 

【さいごに】
抗菌薬で治療することで症状は改善されます。ただ症状が良くなったからと内服を自己中断せず処方された分はしっかり飲み切ってください。またこまめな水分摂取とトイレを我慢しすぎないことが大事です。
普段と排尿の感じが違う、何か違和感を感じる、発熱があったり背中の痛みを感じた方は泌尿器科へ受診・相談してください。