読みもの

病気のお話し

 衛生環境の改善に伴い日本では胃酸分泌を抑制するピロリ菌感染が減っています。それによって胃炎や胃癌の罹患率が減るという良い効果がある反面、「胸やけ」の原因となる逆流性食道炎が増えています。

 逆流性食道炎はピロリ菌感染減少以外にも、脂っこい食事やアルコールの過剰摂取、肥満、ストレス、加齢、タバコなども誘因になるといわれています。

 また逆流性食道炎は放置、悪化すると食道狭窄や食道潰瘍等の直接的な病気のほか、咳、虫歯、中耳炎のような、一見関係なさそうな離れた部位の病気の原因にもなってしまいます。場合によっては胃癌や食道癌といった悪性腫瘍の引き金になることもあります。

 治療は胃酸を抑える薬を内服するのが標準的ですが、このような病気にならないように、日頃から適度な運動やバランスの取れた食事を心がける必要があります。

 「胸やけ」以外にも「食事のつかえ感」「げっぷ」「呑酸(どんさん:苦い胃酸が戻ってくるような症状)」などもよく見られる症状です。これらの症状が気になる時には早めに医療機関を受診することをお勧めします。

消化器外科 科長 小路 毅