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病気のお話し

 認知症の発症には中年期以降の生活習慣が深く関係していることは広く知られています。難聴、肥満、高血圧症、運動不足、糖尿病、うつなどの予防や治療により、認知症発生率が低下することは知られています。

 中年期からの難聴予防はアルツハイマー病の発症を9%も減らすという研究があります。2015年のアンケート調査で18歳以上の13.1%が聴力に問題を感じ、日本では一千万人以上と推計されます。

 難聴が認知症に影響する2つの可能性として、ひとつは「社会的な孤立」、もうひとつは「認知的な負荷」の高まりが考えられます。脳が音(言葉)を理解する働きはとても複雑精緻です。人は話し声の一部を聞き取れなくても、自動的に補って理解できます。

 しかし、聴力低下により脳がこの働きに力を割くあまり、他の働きをする余裕が減り、結果として全体的な認知能力が低下するのでは?というのです。

 職場の騒音や中耳炎以外にも聴力を脅かす危険は世の中に多くあります。認知症予防に耳の衛生管理を今日からでもしませんか? 

認知症疾患医療センター長 畑 隆志