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病気のお話し

 漢方外来には、成長期の子どもと閉経前の女性が多く受診します。起立性調節障害、うつ、不眠、不登校、片頭痛、月経困難症、更年期症状などが主訴です。血液検査をすると、ほぼ全員が鉄蛋白不足です。鉄蛋白不足で最も問題なのは、脳の症状です。脳が鉄蛋白不足なるとミトコンドリア機能が低下してエネルギー不足になり、脳の機能が低下します。そして成績の低下、感情の暴走、起立性調節障害などの自律神経症状、月経不順などの内分泌症状などが起きてきます。

 成長期では身長が伸びると摂取した鉄蛋白が成長のために使われてしまい、脳が鉄蛋白不足になり発症します。身長の伸びと同時に症状が出現するのが特徴です。成人女性では月経・分娩のために徐々に鉄蛋白が失われていき、その人の限界を超えた時点で発症します。成長期から症状が連続することもあります。

 漢方は大変有効なのですが、栄養不足を放置したままだとしばしば再発します。治療と同時に適切な栄養摂取が必要です。患者本人は個々の栄養の過不足を実感しにくいため、定期的な検査で栄養状態を確認することが望まれます。

漢方外来 科長 尾﨑 正時