読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

副病院長 脳神経外科 藤井浩治

これは特殊な血圧測定装置を24時間身体につけておき、30分または1時間毎に血圧を測定するものです。この装置を使用することにより、血圧の24時間の変動を知ることができます。
「え、血圧は1日中ほぼ同じ値を取るんじゃないの?」と勘違いされていませんか?1日のうちで収縮期血圧(上の血圧)では60~80mmHgも変動してしまい、血圧の日内リズムと呼ばれています。「じゃあ、いつの血圧で薬の量を調節しているの?」そうなんです、外来で測定した血圧1回だけでは決められないのです。
高血圧と一言でいっても実はいろいろな種類があります。

  1. 日中の血圧が高いか1日中高い持続性高血圧
  2. 朝の起床時前後に血圧が上昇する早朝高血圧
  3. 夜間に血圧が低下しないか上昇してしまう夜間高血圧
  4. 病院の外来で血圧が上昇してしまう白衣高血圧や、逆に病院の血圧は正常値を取る仮面高血圧など

でもいつも血圧を測るわけにいかないし、寝ている間はどうやって測るの、など疑問が起こります。最近テレビなどでも有名になってきたのが家庭血圧で、起床後1時間以内と就寝前の血圧を1日2回安静時に測定する方法です。この方法と24時間血圧測定を組み合わせて高血圧を診断することが必要になるのです。

【血圧日内変動のリズム】
一般的に、血圧は睡眠中にはもっとも低く、起床前から起床後に上がります。そして、夕方から夜にかけて下がるという一定のリズムを刻んでいます。この血圧日内変動には、自律神経の働きが大きくかかわっています。

通常、昼間の血圧に対して夜間の血圧は10~20%低くなるパターンを示します。しかし、なかには夜間に血圧が十分低くならない方や、夜間に血圧が極端に下がりすぎてします方がいることが分かってきました。夜間の高血圧や早朝高血圧は心臓、腎臓、脳血管などに異常を起こしやすいことで注目されています。
このように血圧の日内変動をみると、合併症の危険性が分かることがあるため、高血圧の治療では家庭血圧の測定や24時間自由行動下血圧測定(ABPM)が勧められます。

【長  所】

  1. 夜間就寝中の血圧がきちんと下がっているか知ることができます。
  2. 起床時の血圧の上昇程度を知ることができます。高い場合は早朝高血圧といい、この血圧コントロールは心筋梗塞、脳梗塞イベント発症抑制の点から重要です。
  3. 診察室以外では正常血圧を示す白衣高血圧の診断には不可欠とされています。
  4. 全体として、血圧の1日の変動を知ることが出来るので、過度の昇圧や降圧を起こさず、降圧薬の効果持続時間や降圧療法の治療効果の判定ができる上、降圧薬及び薬時間の調整により良好な血圧のコントロールが可能になります。

【短  所】

  1. 体位や安静度などの測定条件が同一でありません。
  2. 30分~1時間ごとの測定で睡眠障害などのストレスを来たし、血圧に影響を及ぼす可能性があります。家庭血圧の2回測定と組み合わせることで極めて精度が高くなるため、これらの欠点を補う上で家庭血圧が有用になります。

この24時間自由行動下血圧の基準値は、覚醒時135/85、睡眠時120/75以上、24時間平均はWHOで125/80、日本高血圧学会では135/80以上を高血圧としています。 高血圧は薬を飲んでいるから大丈夫と考えないでください。

ABPMのお問い合わせは 054-336-1111 脳神経外科(内線2117)まで
「24時間血圧を測ってもらえますか?」とおたずねください。

静岡市立清水病院は、市民の医療ニーズに応え、より質の高い最善の医療を提供することを通して、地域住民の健康と福祉に貢献することを目指します。