診療科・各部門について

整形外科

スタッフと専門領域

医師名 出身大学 医師免許取得年 専門領域・資格等
科長(統括科長)
奥山邦昌
慶應義塾大学 平成6年 ・日本整形外科学会認定 整形外科専門医
・日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
・日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
・日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
・日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術  技術認定医
・慶應義塾大学 客員講師
科長
菊池謙太郎
昭和大学 平成12年 ・日本整形外科学会認定 整形外科専門医
・日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
・日本整形外科学会認定 スポーツ医
・日本整形外科学会認定 リウマチ医
・日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医
医長
武谷博明
慶應義塾大学 平成24年 ・日本整形外科学会認定 整形外科専門医
・日本手外科学会認定 手外科専門医
医師
福島啓太
慶應義塾大学 平成30年  
医師
赤尾翔太郎
福岡大学 平成30年  
医師
伴 昭輝
川崎医科大学 平成31年  
医師
半田雪乃
浜松医科大学 令和2年  
医師
山﨑 玲
北里大学 令和3年  
医師
冨田 煕
東京医科大学 令和4年  

診療案内・外来表

付記
整形外科学会専門医制度教育研修施設
日本手外科学会専門医制度認定研修施設

はじめに

当院の整形外科は、慶應義塾大学整形外科教室の派遣医師で構成されています。都市部以外の地域では慢性的に医師不足に悩まされておりますが、慶應義塾大学整形外科教室には毎年たくさんの若手整形外科医師が入局するため人材が豊富です。当院の整形外科にもその潤沢な人材力が生かされており、多くの整形外科専門医が在籍しています。また、その専門性においても脊椎・脊髄疾患を奥山・柴田が、手および肘関節疾患を萩原・河野が、肩関節疾患を河野が、下肢疾患(股関節~足)を菊池・石井が担当し、すべての領域をカバーするバランスのとれた専門医の構成になっております。さらに、より細分化された専門医制度のある脊椎脊髄、手外科領域においても専門医をそろえ、それぞれの分野の研修施設として認定されております。 手術は毎年平均1300件程度行っており、骨折の手術はもちろんのこと、脊椎、脊髄の手術(椎間板ヘルニアの内視鏡手術、脊椎固定術、頚椎低侵襲手術など)、上肢、下肢の人工関節手術(肩関節、肘関節、股関節、膝関節、足関節)、関節鏡を用いた手術(鏡視下腱板修復術、反復性肩関節脱臼に対する鏡視下手術、肘関節鏡視下手術、手関節鏡視下手術、膝関節前十字靭帯再建術、後十字靭帯再建術、半月板切除術、鏡視下足関節固定術など)も多数行っております。さらに非常に難しい症例には慶應から各分野における専門医を招聘して治療にあたっております。 皆様に信頼される病院を目指して、近隣の医療機関の先生方とも連携をとり、地域医療に貢献するように心がけています。


当科で治療する疾患については次をご覧下さい。

1. 脊椎脊髄

2. 肩関節

3. 肘関節、前腕、手

4. 下肢(膝関節、股関節、足関節)

主な対象疾患

1. 脊椎脊髄疾患

椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎分離症、頸椎症、脊椎脊髄症、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、外傷(骨折・脱臼・脊髄損傷)、側彎症など脊椎脊髄専門医による外来や検査、手術を行っています。多くの開業医から紹介をいただいており、患者さんに満足いただける医療を提供すべく、診療スタッフ一同取り組んでおります。画像検査では単純X線(レントゲン)、CT(断層CT、再構築3DCT)、CTangio、MRI、骨シンチグラフィー等の他、筋電図、下肢血流検査、骨塩定量(骨粗鬆症検査)など、必要に応じて総合的に病態を評価し治療を行います。外来では診察、投薬、注射(点滴、局部トリガー注射、仙骨硬膜外ブロックなど)等を行います。

検査入院では、脊髄造影(ミエログラフィー)、神経根造影(神経根ブロック)、椎間板造影などを行い、診断のみならず、責任病巣の特定、手術適応の有無、手術法の選択など今後の治療方針を決定します。手術は予定手術を原則とします。特に低侵襲手術には力を入れており内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(MED)や顕微鏡下選択的椎弓形成術などを行い良好な成績を収めています。疾患や手術法によっても異なりますが、入院期間は数日から2週間ほどであり、低侵襲手術では術後1日目、ほかの手術でも2-3日以内には歩行可能となります。当院では脊椎脊髄指導医のもと、手術を行っております。手術では手術用顕微鏡や内視鏡(MED)、術中レントゲン透視装置、術中回収血装置、Cusa(超音波装置)などの医療支援装置を使用し充実した手術を行っています。

侵襲脊椎手術

1)内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(MED)

椎間板が 突出し神経を圧迫すると腰痛だけでなく下肢痛や痺れなどが出現します。安静、内服薬などで改善しない場合、手術を行うこともあります。従来は大きく皮膚を切開し手術をしていましたが、当院では内視鏡による小さな傷で行っています。

脊椎内視鏡は1997年にアメリカで開発された手術法で、日本国内ではまだ普及していません。手術は約20mm皮膚を切開し、直径18㎜の内視鏡を挿入し、脊椎に到達します。内視鏡を通して映し出される画像をテレビモニターで見ながら、特殊な手術器械を用いて限られたスペースの中で椎間板ヘルニアの摘出を行います。平均約1時間程度で済み、出血もほとんどありません。皮膚や筋肉のダメージが最小限ですむため、傷の痛みが少なく、早期に社会復帰ができます。術後は翌日からコルセットを装着して歩行可能であることが従来法と比べて大きなメリットです。

2)選択的椎弓形成術

頸椎症性脊髄症や頸椎後縦靱帯骨化症などの圧迫性頚髄症に対しては、手術用顕微鏡を用いることにより後方の筋肉を温存する術式を行っています。手術後の頸部痛が少ない、 頚椎のカーブがくずれにくい、手術後の運動制限がない、手術中の出血量が少ない、早期社会復帰などのメリットがあります。従来の頚椎の手術に比べ痛みが少ないため手術の翌日から装具なしで歩くことができます。


 2. 肩関節疾患

肩の痛みを有する疾患としては主に
1. 五十肩(四十肩)
2. 腱板断裂
3. 変形性肩関節症
4. 骨折(鎖骨、上腕骨、肩甲骨)
5. 肩関節脱臼
6. リウマチなどによる変形、炎症
7. 肩こり
などがあります。
(それぞれの詳細についてはクリックをしてご覧ください)

2016年4月から肩関節手術に精通した河野が新たに赴任し、関節鏡を用いて行う手術(腱板を縫合する手術、脱臼治療のための手術)や人工関節置換術の手術数が増加傾向です。最近では患者さんのクチコミや近隣の開業医の先生から御紹介頂いて外来を受診してくださる方も少しずつ増加してきました。肩関節の治療は手術だけでなくリハビリが重要になります。入院中はもちろんのこと退院後も引き続き外来を受診していただき経過を見させていただきます。手術件数は増加傾向ですが、あくまでも治療のメインは保存療法(手術を行わない治療)であり、外来通院だけの患者さんもたくさんいらっしゃいます。肩周辺の痛みで悩んでおられる方は是非一度当院の外来を受診してください。

肩関節手術実績

  2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
関節鏡視下腱板修復術 30件 29件 17件 18件 8件
関節鏡視下関節唇形成術
(肩関節脱臼に対する手術)
2件 4件 3件 2件 1件
その他関節鏡視下手術 6件 3件 1件 1件 0件
人工肩関節置換術 1件 4件 5件 2件 1件
人工骨頭置換術 1件 0件 1件 5件 2件
リバース型人工肩関節置換術 3件 1件 5件 1件 4件
鎖骨骨折、肩鎖関節脱臼手術 31件 45件 51件 58件 56件
上腕骨骨折手術 22件 10件 32件 31件 34件
肩甲骨骨折手術 3件 4件 0件 4件 4件
偽関節手術、矯正骨切り術 0件 0件 0件 0件 2件
その他 25件 26件 13件 1件 5件
合計 124件 126件 128件 123件 117件

 3. 上肢疾患(手・肘・肩関節疾患)

上肢の骨折、絞扼性神経障害(手根管症候群、肘部管症候群)、肩関節疾患(腱板断裂、反復性肩関節脱臼)、関節リウマチによる関節の痛みなど初診で当院にかかられる患者様も多くいらっしゃいますが、多くの開業医から紹介をいただき治療に当たっております。単純X線、CT、3D-CT、MRI、筋電図などにて検査を行い、総合的に病態を把握しています。

主には、骨折(上腕骨骨折、橈骨骨折、尺骨骨折、手根骨骨折、指骨折、肘関節内骨折)、腱の損傷(伸筋腱断裂など)、絞扼性神経障害(手根管症候群、肘部館症候群など)、肩の腱板断裂などの治療を行っています。

また、新しく開発した人工肘関節を用いた置換術、橈骨遠位端骨折後の変形治癒症例に対する独自デバイスを用いた手術なども行っています。

橈骨遠位端骨折後の変形治癒・人工肘関節

橈骨遠位端骨折変形治癒後の矯正骨切り術

橈骨遠位端骨折と言われて治療をしたが、手首の痛みがとれないために、お困りの方は、変形治癒によるものかもしれません。これは、骨折が変形して癒合してしまうことによりおこります。橈骨遠位端骨折後の合併症として最も頻度が高いものです。当院では、詳細な検査を行った後に治療をしています。

変形治癒が明らかになった場合には、当院で独自に開発した骨切りデバイスにて正確な手術を行うことが出来ます。術後は疼痛がなくなって、手首の動きがよくなることが期待できます。

人工肘関節置換術

関節リウマチ、高齢者の上腕骨遠位部粉砕骨折に対して、人工肘関節置換術を行っています。

慶応義塾大学、女子医科大学の先生とともに開発した新しい人工肘関節を当院では使用しています。この肘関節は、詳細な解剖学的な研究に基づき開発されており、curved stem、non cemented、高い髄腔占拠率、完全伸展可能など多くの優れた特徴があります。そのため、患者様は、体に有害な骨セメントを使用することなく手術を受けられ、術後のゆるみなどの問題が少なくなり、肘の動きがよくなり、痛みが軽減されます。

手肘関節手術実績

  2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
骨折に対する手術 ( 抜釘術を含む) 224件 260件 215件 242件 272件
腱損傷、腱鞘炎に対する手術 21件 50件 34件 60件 67件
神経損傷、麻痺に対する手術 35件 45件 46件 39件 48件
変形に対する手術 5件 10件 7件 17件 6件
その他(腫瘍) 11件 9件 23件 22件 17件
合計 296件 375件 325件 380件 410件

4. 下肢疾患(膝・股関節・足疾患)

変形性膝関節症、前十字靱帯損傷、後十字靱帯損傷、半月板損傷、タナ障害、離断性骨軟骨炎、変形性股関節症、大腿骨頭壊死、アキレス腱断裂、足関節靱帯損傷、骨折、脱臼など

以前では、“膝の痛みなどは歳のせいだから”、“仕事にはつきものだから我慢するしかない”、“命に別条ないので病院にかかるまでもない”などと済まされることがあたりまえでした。しかし、少子高齢化が進む現在では、例え高齢でも高い質の生活(QOL)が重視され、運動の面でも不自由のない生活が望まれるようになりました。

当院では関節鏡による鏡視下手術(前十字靭帯再建術、半月板切除/縫合など)、人工関節置換術(人工膝関節置換術、人工股関節置換術)などに力を入れており、良好な成績を得ています。入院期間は、疾患や手術法により異なりますが、概ね半月板損傷などに対する鏡視下手術の場合には4-5日間、靱帯損傷などに対する鏡視下靱帯再建術の場合には術後2週間、人工関節置換術の場合には術後3-4週間程度の入院が必要になります。

鏡視下手術(前十字靱帯再建術、半月板切除/縫合など)・人工関節置換術(人工膝関節置換術、人工股関節置換術)

前十字靱帯再建術

前十字靱帯が損傷すると、スポーツ時に支障をきたすことがあり、また、その後に半月板がきれたり、関節軟骨が傷んだりするので、年齢が若く、スポーツを日常的に行っている人は治療が必要になります。前十字靭帯は血行が乏しいので、一度損傷すると、ギプスによる外固定や、手術的に縫合術を施してもほとんど治癒しないと言われています。そのため、現在のところ治療として靱帯のかわりになるものを移植する方法しかありません。

日本では主に骨付き膝蓋腱と膝屈筋腱のどちらかを移植の材料として用いることが多く、ともに良好な成績が得られています。但し、移植した腱がそのまま靱帯になるのではなく、一度壊死して、その後細胞が浸潤してきて新しい靱帯に生まれかわるため、スポーツ復帰までに多くの時間が必要となります。

当科では移植腱に膝屈筋腱と人工靱帯を組み合わせたハイブリッド型移植材料を利用し、これにより高い力学的強度を持つ靭帯を作ることができるようになり、前十字靱帯の再建のみならず、後十字靱帯の再建にも応用しています。また、前十字靭帯は前内側線維束と後外側線維束の2つのバンドからなり、骨に付着する部分が太く、中央が細い構造をしていることが知られていました。最近の研究により、この2つのバンドは膝の角度によって相互に機能を分担していることがわかり、より生体に近い靭帯を復元することが望ましいという意見が唱えられるようになっています。

当科では前内側線維束と後外側線維束の2つのバンドを、2つのハイブリッド型移植材料でそれぞれ再建しています。また、再建時には関節鏡を用いて行うため、手術創は小さくて済みます。現在、形状でも機能でも正常に近い状態に再建することが可能となっています。

鏡視下半月板切除

半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にあるC型をした軟骨の板で、クッションの役割をしています。これが損傷されると、膝関節の曲げ伸ばしの際に痛みや引っ掛かりを自覚します。ひどい場合には、頻回に膝に水がたまったり、急に膝が動かなくなる“ロッキング”という状態になり、歩けなくなるほど痛くなります。

原因はスポーツなどの怪我から生じる場合と、加齢により傷つきやすくなっている半月板に軽微な外力が加わって損傷する場合があります。怪我で生じる場合では、体重が加わった状態での捻りや衝撃だけで半月板が損傷するものと、靱帯損傷に合併して起こるものがあります。半月板は加齢に伴い変性するので、40歳以上ではわずかな外傷でも半月板損傷が起こりやすくなります。

また、診断では単純X線(レントゲン)では半月板は写りません。症状や診察で半月板損傷を疑えば、MRI検査を行います。MRI検査は非侵襲性であり、半月板損傷の病態や靱帯損傷の診断にも有用です。

治療ではリハビリテーションや抗炎症薬の内服などの保存的加療で改善する場合がありますが、改善しない場合には手術を行います。手術法には切除術(損傷した部分を切り取る)と縫合術(損傷した部位を縫い合わせる)の2種類があり、通常は関節鏡(関節の中を詳しく調べるための小さな内視鏡カメラのことで、ファイバースコープのひとつです)。を使って行います。

人工膝関節置換術

人工膝関節置換術の適応は、関節軟骨が破壊され、下肢の変形が進んだために、疼痛が強く日常生活をおくるにあたってかなり支障をきたす方です。(膝関節の痛みの原因も多種にわたるため、疼痛が強いからといって必ずしもこの手術が必要なわけではありません。) 人工関節の材料として一般的にはコバルト合金、チタン合金などが使われています。長所としては、①高い除痛効果がある、②術後早期から荷重ができる、③入院期間が短い(当科では術後3-4週間で退院)、④高度な変形にも対応できるが挙げられますが、短所としては、①関節可動域が犠牲になることがある、②人工物であるため再手術が必要になることがあることがあります。

手術方法を簡単に解説すると、傷んだ関節軟骨を切除してそこに金属などの人工物をかぶせ、下肢の変形を矯正することです。関節置換といっても膝関節そのものをいれかえるわけではありません。虫歯の治療でいえば、入れ歯にするのではなく、金歯/銀歯をかぶせると考えると良いと思います。

外傷治療(下肢)

当院で行われている手術で最も多いのが下肢の外傷です。
転倒、労働災害・交通事故等による骨折や脱臼などの外傷治療を積極的に行っています。特に下肢の外傷の場合には、受傷を契機に歩行困難を余儀なくされ、日常生活・仕事などに著しい支障を来します。具体的には、早期社会復帰、元の歩行レベルまでの改善などの運動機能の回復を第一の目標とし、手術適応の可否を判断した上で治療を行っています。例え、骨の強度が弱くても、粉砕・関節内骨折や人工関節(人工骨頭)近傍の骨折であっても、これまでの当院でのノウハウを生かし治療を行っています。手術的加療の場合、全身状態にもよりますが、当院では手術までの待機期間が即日~1週間前後と比較的短いことが特徴です。

外来について

現在、再診は予約診療をしていますが、患者様が多く担当医によっては待ち時間が長く診療時間が短いという悪循環に陥っています。その結果、外来診療が時間内に終わらず、手術・病棟業務および救急患者様への対応に慢性的に支障が出ている状態です。

解決策として:
①症状が安定している患者様は、できるだけ家庭医となる開業医・診療所で治療をしていただく。
②救急患者様以外は、まず近くの開業医・診療所を受診していただき、必要に応じて担当医に紹介状を書いてもらい当院に受診していただく紹介制外来を導入しました。

今後市立病院として【救急患者様への迅速な対応】【開業の先生では対応しづらい患者様の治療】に専念してまいります。

その他の脊椎疾患症例

その他の上肢疾患症例

上腕骨骨折
上腕骨骨幹部骨折に対して、骨折部のずれが大きい場合などは、手術を施行することがあります。プレートや、髄内釘などで固定します。

 

前腕骨骨折

 

鎖骨骨折

 

伸筋腱断裂
包丁で手の甲を切ってしまって、指を伸ばせなくなってしまったなどの症状は伸筋腱断裂の可能性があります。この場合は、腱を縫合する手術が必要になります。
また、関節リウマチの患者様は、腱が骨のでっぱりや、滑膜の炎症によって、自然に切れてしまうこともあります。このような場合は、切れていない腱を使って伸筋腱を再建し、変形した関節を形成しています。また、滑膜炎をほうっておくと、さらに腱が切れてしまう場合があるので、滑膜切除術も合わせて行っています。

 

鏡視下腱板縫合術
肩の痛みがある場合、または肩が挙らない場合に、MRIなどの検査を行うと、腱板断裂が原因であることが分かることがあります。肩の痛みのために夜間に目が覚めてしまうような人でも、手術によって疼痛がなくなることが期待できます。
従来は大きく皮膚を切開し筋肉を痛めて手術をしていました。当院では、関節鏡による手術をしていますので、1cmほどの小さな傷を数カ所つくるだけで、切れた腱板を縫合するなどの手術をすることができます。傷が小さいので術後の痛みも少なくてすみます。

五十肩だからと思ってあきらめている方でも、MRIなどの検査で腱板断裂が見つかり、治療を受けて痛みがなくなっている方も多くいらっしゃいます。肩の痛みにお困りの方は、当院にてまず検査を受けてみることをお勧めします。

 

手根管症候群
親指、人差し指、中指、薬指の半分がしびれている人は、手根管症候群の可能性があります。これは、正中神経という神経が、手首の手根管とよばれる場所が狭くなって、締めつけられていることによるものです。当院では詳しく検査をした後に、適応のある人には手根管開放術などの治療を行っています。

その他の下肢疾患症例

大腿骨顆部・顆上部骨折(関節内骨折)[膝関節内骨折]

膝関節内骨折は骨折治療の中で最も治療が困難な骨折です。
このような場合、できるだけ正確に関節面の骨折部を元の状態に戻す必要があります。術後の疼痛、関節拘縮、関節の不安定性を防止する為には、骨折に伴う関節の変形、不安定性、関節軟骨表面の損傷変形などに対しての正確な整復と固定が不可欠だからです。粉砕の程度が強ければ強いほど困難さが増します。1mmでもズレがあると、関節機能のバランスが崩れ、結果として関節機能(滑らかに曲げたり伸ばしたりが可能)が損なわれることになります。

 

大腿骨転子部骨折(骨折観血的手術)

 

五十肩(四十肩)

五十肩とは古くは江戸時代から認識されていた肩の痛みで、50歳ごろになると特に原因がないまま痛みが出現するものです。しかし現在でもその原因は詳しくわかっておりません。 五十肩は3つの病期に分けれらており、激烈な痛みをともなう炎症期、次第に痛みは改善してくるものの動きが悪くなる拘縮期、痛みとともに動きが回復してくる回復期に分けられます。通常1〜2年程度でほぼ元どおりになるとされておりますが可動域が制限されるケースも散見されます。 痛みはステロイド注射や鎮痛剤で痛みがコントロールできることが多いですが、堪え難い痛みが出現したり、仕事や日常生活に支障が出るような可動域の制限に対しては手術を行うこともあります。 五十肩の痛みでお困りの方はぜひ当院を受診してください。

腱板断裂

腱板とは肩甲骨と上腕骨をつないでいる4つの筋肉の総称で、上腕骨頭を取り囲むように存在しています。 肩をぶつけるなどの軽い外傷で腱板が切れたり、日常生活での反復動作によって腱板がすり切れることで起こります。打撲や50肩と考えて医療機関を受診しなかったり、レントゲンだけの評価によって問題ないと判断されるケースが多数あります。 正確に診断するにはMRIやエコー検査をする必要があります。 明らかに外傷が原因の場合は手術をお勧めしますが、原因がはっきりしない場合はいきなり手術をすることは少なく、注射などの治療で痛みが改善するのを待ちます。多くの場合は注射療法などで痛みが改善してきますが、疼痛が改善しない場合などは手術を行います。 手術は従来のような筋肉を切開する方法ではなく関節鏡を用いて行うため、正常組織へのダメージが少なく、傷も1cm程度のものが数個できるだけですみます。 持続する肩の痛みでお困りの場合はぜひ当院を受診してください。

変形性肩関節症

変形性関節症は 1 腱板断裂を伴わずに関節軟骨の摩耗により生じるもの  2 腱板断裂が進行して変形を生じるもの に分けられます。 1 : 肩甲骨と上腕骨の関節軟骨がすり減ることで、動かす際や安静時にも痛みが出現する状態です。通常は体重をかける関節(膝関節、股関節)に多く見られますが、肩関節でも起こります。農業、漁業などの肩をよく使用する方に多いとされています。 通常は腱板断裂を伴わないことが多く、レントゲンやMRIなどで診断を確定します。 治療方法はヒアルロン酸注射や投薬による治療を第一選択としますが原因がとりのぞけるわけではないため、痛みが改善しない場合は人工肩関節置換術という上腕骨、肩甲骨ともに軟骨部分を人工関節に置き換える手術を行います。 2 : 上腕骨をとりかこむ筋肉の集まりである腱板が断裂し、次第に変形が生じる状態です。痛みや肩関節の動かしにくさ(腕がうまくあがらない、など)を自覚することが多いです。診断はレントゲン、MRIを用いて行います。腱板が大きく断裂しているため、通常の人工肩関節置換術を行っても腕がうまく上がりません。そこで、通常とは反対の形をした「リバース型人工肩関節」を用いて手術を行います。この手術は一定の技術を有する特定の医師にしか行えないことになっておりますが、当院ではその手術を行うことが可能です。

肩関節脱臼

肩関節は肩甲骨関節窩と上腕骨頭から成り立っています。球のような形をした上腕骨頭が、皿のような肩甲骨関節窩に引き寄せられながら動くという構造になっています。受け皿となる関節窩が広く浅い形をしているため、非常に大きな関節の動きが可能になる一方で、とても脱臼をしやすい構造になっています。 肩関節脱臼は9割程度が前方に脱臼します。10代〜30代の若い方に多いですが、高齢者にも起こります。若くして脱臼を経験した方は、しばしば再脱臼を起こします(いわゆる脱臼グセです)。2回以上脱臼を起こしている場合は、関節の軟骨が次第にすり減り将来的に肩関節の変形を来しやすくなるため手術をお勧めします。 手術は通常関節鏡を用いて、脱臼によって破綻した前方の関節唇という組織を再度縫合する方法を行っています。 選手同士の激しい接触が予想されるコリジョンスポーツ(ラグビー、アメリカンフットボールなど)の選手の場合は、より脱臼しにくい肩を作るという目的で、骨と筋肉を移行する手術方法を行うこともあります。 「脱臼グセ」でお困りの患者さんはぜひ当院を受診してみてください。