9月に入っても暑い日が続いていますね。「今年の秋は短い」と予報で言っていましたがその通りになりそうですね。
こんな事で彼岸花はいつも通りに咲くのでしょうか? こう暑い日が続いていると咲きたくても咲けないのではないでしょうか。
でもきっといつものように咲くんですよね。
ほんと、自然と言うのは不思議です。
この間昼休みのジョギングをしているとき、病院前の街路樹の下にどんぐりが落ちていました。いくら暑いと言っても季節は確実に移り変わっているんだなと実感しました。
さて、前回は遺伝子診断についてお話しました。
ゲノム解析が進み、飛躍的な進歩を遂げるであろう遺伝子診断について具体的な例を2つあげてお話をしましたが、それではもう一方の遺伝子治療のほうはどうなのでしょう。
今回はその方面のお話をしたいと思います。
現在、世界で3000例以上の遺伝子治療が行われていますがその内の7割はがんを対象としていると言われています。
それではこの遺伝子治療でがんは克服できるのでしょうか?
結論から言いますと、現状では遺伝子治療によって簡単にがんが治るようになる可能性は少ない様です。現在のがんに対する遺伝子治療は、治療法の1つとして確立できるかを確かめている段階にあると言われています。
今行われている治療法は大方2つに分類されます。1つめは、がん細胞に治療用の遺伝子を直接導入してがん細胞を破壊する方法です。たとえば、細胞のがん化にブレーキをかけるがん抑制遺伝子を直接がん細胞に導入したり、ある種の薬物を細胞障害作用を持つものにかえる酵素の遺伝子をがん細胞だけに注入しておき、その後で薬を投与しがん細胞だけを破壊する、などがあります。ただしこうした方法では遺伝子を導入した部位ではがん細胞を破壊しても、転移したがんなどには効果がないと言われています。
もう1つはがんを攻撃する免疫システムの増強を目的とした免疫遺伝子治療です。
がん細胞に免疫系を刺激する遺伝子を導入するのです。この場合は全身での効果が期待出来ますが残念ながら現在に至るまでこれらの免疫療法は目覚しい効果を上げていません。
このような現状から遺伝子治療のみでがんが治る可能性は少ないと言えます。ですので 従来の治療法との併用で少しでも治療成績を上げる地道な努力が必要と言われています。
それではがん以外ではどうでしょうか?
最近、細胞の一番の大元である細胞がなんなのかがわかってきました。
「幹細胞」と呼ばれる細胞で、この細胞は自分自身を複製すると同時にある条件のもとでいろいろな臓器や組織の細胞に分化していく能力を持ちます。
この中で血液細胞のもとになっているのが「造血幹細胞」です。赤血球や白血球などの 細胞はすべてこの細胞から作られます。ですので、この元になる細胞に必要な遺伝子を
組み込めば、そこから出来る細胞に代々受け継がれていくので遺伝子治療には理想的な 細胞と言えます。普通の細胞に遺伝子を組み込んでもその細胞の寿命と一緒に導入された遺伝子も消えてしまいます。しかし、幹細胞なら組み込んだ遺伝子も一緒に複製され一生受け継がれていくことになります。しかし、人の造血幹細胞に遺伝子を導入することは難しく、これまで治療が成功した例はありませんでした。ところが昨年12月の米国血液学会で画期的な成果が発表されました。重症免疫不全症と言って感染症などから体を守る免疫が働かない病気があるのですが、この治療にパリの病院で造血幹細胞に正常な遺伝子を組み込み、患者の体に戻すといった遺伝子治療が行われました。
その結果免疫作用のある細胞が増え、元気に退院したのです。これほどまでに治療効果が確認された遺伝子治療は例がないと言われています。
つまり裏を返せばそれだけ難しいと言うことです。
今回も2つのことを例に挙げましたがどちらもあまり明るい話ではありませんでした。
それでは遺伝子治療で画期的な効果を上げている治療はないのでしょうか?
このお話の続きはまた来月いたします。
