診療科・各部門について

過去のおはなし

 

新世紀の医療(3)

 

東海地方も梅雨入りが宣言され、いやな季節になって来ましたね。
このHPを御覧になっている方で梅雨時が好きと言う人がいらっしゃいましたらぜひその理由などを書いたメールをください。必ず1年に1度は訪れるものなのですから楽しく過ごすに越した事はありません。送られたメールを参考にしたいのでお願いします。
さて、今回で3回目に入りましたゲノムについてのお話ですが如何でしょうか?
前回は、各論的なお話をしましたが興味を持たれましたか?未知なる可能性を秘めた ゲノム計画ですので医療の分野でも大きな期待がもたれています。しかしその反面、警笛を鳴らす方達もいらっしゃいます。今回はゲノム計画の問題点にふれて、今後進むべき道を皆さんで考えていきたいと思います。
このお話を読んだ後、ご意見ご感想をぜひメールで送ってください。

 
 

まず考えなければならないのは、プライバシーの問題です。個人のDNA情報は病気の 治療や予防に役立つ反面、差別などのもとになり兼ねないと思われるからです。
ゲノムを調べることで、その人が潜在的に持っている病気や遺伝子の異常などが明らかにされます。もっと研究が進めばそれ以上の事も分かるかもしれない。その事が就職や結婚などに際して利用されたり、データを悪用した犯罪などの起きる可能性もあります。
ゲノムの個人データの管理はとても重要な問題となるでしょう。
そもそもゲノムの情報にはどれだけの影響力があるのでしょうか?差別や偏見を起こすほど影響力の高いものなのでしょうか?
次に気になる点は、遺伝子診断についてです。何度も言うように個人のゲノムデータが 分かるようになればその人が潜在的に持っている病気や遺伝子の異常が明らかになります、果たしてその異常はその人に知らされるべきなのでしょうか?第一回目(4月のお話)の冒頭で「あなたはガンになり易い遺伝子を持っていますから次の事に注意して生活してください」と言う事ができるようになるのです。と言いましたが果たしてこの事が私達にとって良い事なのでしょうか?もちろん自分の身体の事なのだから知ったほうが良いと言う意見もあるでしょう。その反面、知らなくてもガンにならずに生涯を終えるかもしれないのに知ったおかげで始終気にしながら生きていかなくてはいけなくなった。と言う方もいらっしゃると思います。病名の告知についてはだいぶ一般的になってきましたが、まだ病気にもなっていない段階での告知はどうですか?
さらにこの技術は出産前診断の可能性も秘めています。遺伝子異常を持った子を中絶してしまって良いのでしょうか?また、この検査を妊婦さん全員に行うべきなのでしょうか?
また、技術が発達すれば出産前診断どころではなく、出産前に子供のあらゆる特徴を決める事ができるかもしれません。デザイナーベビーと言う呼ばれ方をしていますが、肌や髪の毛や目の色、身長、体重、などはもとより賢さや運動神経のよさ、性格と言った事までまた、病気や障害を持たないなど例をあげたら限がありません。私も子供を持つ親として我が子を思う親の気持ちはわからなくないですが、果たしてここまでする必要はあるのでしょうか?また、行っても良いのでしょうか?
さらに気になる点は。特許の申請についてです。各医薬品メーカーは、明らかにした DNAの配列に対し特許をとり利益を独占しようと必死です。
インスリンやインターフェロンなど遺伝子の塩基配列や機能がすべて解明されている遺伝子には特許が出ていると言う経緯がありますが、果たして私たち誰もが持つ遺伝子配列に対して特許は出されて良いものなのでしょうか?
以上の事は今後国際的な検討が必要になってくると思われますが、私が一番懸念しているのは、木を見て森を見ずの喩にあるように、人(病気)を診る時ゲノム単位での話に終始し人の体全体が見えなくなってしまうのではと言う事です。
“生命誌”と言う言葉をご存知ですか?聞きなれない言葉かもしれませんが、簡単に説明しますとゲノムを単位とした言葉なのですが、細胞単位での治療や変化だけを求めているのではなくその生命全体やもっと大きく生命体の歴史や環境までも一緒に考えようとしたものです。人間の病気を機械の故障にたとえるなら、修理し充分に働けるようにするにはその構造や機能を熟知しなければいけません。その方向への科学は急速に進歩していますが果たしてそれが人間の健康で心豊かな生活を支える医療の発展に結びついているかという事には疑問が残ります。科学研究の成果を踏まえながら環境や歴史性などを加え、その全てを同じ視点から考えていこうとする試みが生命誌なのです。
この考え方がもっと皆さんに広まっていけば良いなと思っています。
今回は、ゲノム計画の問題点についてお話しましたが如何だったでしょうか?
新世紀の医療などとたいそうな題をつけてお話してきましたゲノムプロジェクトですが 今回のお話を聞いてイメージが変わってしまいましたか?
しかし、大きな可能性を秘めていることには違いまりません。ですので今のうちに皆さんがよく理解し、よく考え、その方向性を決定して行かなければなりません。
今回のお話がそのきっかけになってもらえれば幸いです。
さて次回のお話ですが、もう少し新世紀の医療について続けたいと思います。
人工臓器や人工血液。医療を取り巻く環境の変化など取り上げたい話題は沢山ありますのでどこまで出来るかわかりませんが楽しみにしていてください。
今回のことについて是非皆様のご意見をお待ちしています。    

 

 

戻る

 

ページのトップへ