正常値について
みなさんは、正常値という言葉を耳にしてどう思われますか?自分の検査結果は正常値なのだから
正常であり病気ではない、また、正常値から外れているから異常であり、病気である。
いささか短絡的ではありますが、このように思われる人も少なくないと思います。
今からするお話を読んだ後、もう一度正常値について考えてみてください。
きっと今までと違うイメージを持たれると思います。
少し専門的な言葉も出てくると思いますが、できるだけ判りやすく説明しますので、是非最後まで読んでみてください。
ヒトの身体の機能や成分は恒常性を保ちながら、なおかつ外界の変動に対応してかなりの幅で変化しています。また、健康な状態から病的な状態への変化は連続的ですから、どこからが病的で、どこまでが健康的であるかの判断は、きわめて難しい場合が多いのです。このことからも判ると思いますが、たとえ正常値が絶対的な数値であったとしても、健康なのか病気なのかを判断することは難しいことです。はたして、正常値というのは絶対的なものなのでしょうか?。採血などの検査結果に限らず、他の医学的情報についても言えることですが、ある患者さんから得られた結果について判断を下し、次の医療行為に移るためにはまず健康時のパターンを念頭にいれて、それと比較をします。それには、比較するための「物差し」が必要となるわけですが、その役目をするのが正常値なのです。
このように患者さんを正確に診断するのに欠かすことのできない正常値ですが残念ながら決して絶対的なものではありません。なぜならば、正常値には次の2
つがあるからです。
・集団正常値(正常範囲)
正常人の集団から得られる正常値
・個人正常値(個人健常値)
それぞれの個人(個体)に特有な正常値
個人健常値をすべての検査項目について持つことはほとんど不可能であり、たとえ可能であってもきわめて高価な健康への投資となってしまいます。実際にはそれぞれの年代(乳児検診、学童検診、成人病検診、老人検診など)に最も必要な検査を行って、普段の健康なときの測定値を記録しているのです。
それらのごく少数の検査項目以外では、少なくも初診時には集団正常値を基準にして判断しているのが実状です。またせっかく受けた検診の結果も、患者さんにうまく結果が伝わっていなかったり、ぐあいが悪くなって病院にかかるときに利用されなかったりしています。なぜ利用されなかったかはまた別の機会にお話することにして、臨床的に真の意味で基準となるのは個人健常値の方です。特に個体差の大きい高齢者にとっては普段の測定値がものを言ってきます。年に一度は検診を受けて普段の測定値を蓄積していってください。
また、検診を受ける場所も選ばなくてはなりません。検診結果を診療に役立てることのできるところを選んでください。ちなみに本病院は、ドックなどの結果を実際の診療時に利用しやすいシステムで運用しています。
ちょっと長いお話になってしまいましたが、正常値という言葉のイメージは変わりましたか?。
絶対的な数値ではないけれども、診断を下すには欠かすことができない数値、なんだか曖昧な言い方ですが正常値という言葉を一言で説明するとこうなってしまいます。ですから皆さんは自分の検査結果が、正常値範囲に入ったとか、外れたとかで一喜一憂せず身体の状態などその他の条件を含め総合的に判断して下さい。
そんなことができるわけないでしょうって、そのとおりです。
そのために病院があり、医師がいるのです。
<正常値>という呼び方も近年、<基準値>に変わりつつあります。今後の展開や今抱えている問題(病院較差など)については、またの機会にお話します。
